2010年 08月 25日
きんぎょの夢 |

真面目に生きてる市井の人々の、こまやかな出来事。ささやかな男女の心の機微を、品よく、端的に、分かりやすく描写したら、右に出る者がいませんよね。
しかも、短編らしく、意表をつく、どんでん返し… 「この人は、出てきた時から既に名人であった」と別格の誉められ方をした噂も分かる気がしたのでした。
きわめて映像的です。「この役を今、演じられるとしたら…」と当てはめてみるのも楽しいものがあったりしてね。
(実際に、ドラマから小説化された模様。調べてみると、彼女の作品を、違う方が、ノベライズしてたのが、少しだけ残念無念)
たしかに、ディテールや人々の距離、温度、習慣、時代的な諸事情、等々は、この時代ならでは。昭和を濃厚に感じてしまいますが(とくに年齢に対する世間や当人の意識! これが、ものすごく異なるのが印象的… みんな、オトナ、だったんですね)決して変わらないものは、人の心… だなぁ、としみじみ。
うんと若い頃とは印象が変わるのも、新鮮な驚きでした。
何なんでしょう。向田文学に触れた、独特の爽快感。
「名作の香り」や「独特の美意識」による心地よさ… なのかな?
「されど健気」としか言いようがない人々の心根と作者の凛とした姿勢に、胸うたれてやまなかったのでした。
by noho_hon2
| 2010-08-25 08:31
| 本、雑誌
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