
それは、まだ20歳前後のこと。
敬愛する先輩に、こ~んな相談をもちかけたことあります。(無粋で未熟もエエトコで、失礼…)
「ねぇ、先輩。カレシって、どうしても作らなければイケナイものでしょうか? 私、なんだか異性に対して、仲間というか、半ば身内みたいな関係が、すっごく快適で、“ずっと、このままだとイイのにな…”と感じてしまうんだけど、そういうのって許されないのかな?」
「う~ん、私はね。
“恋の神様”っている気がするの」
「……?!」
「まだ、頭の中でアレコレ考えてる内は、ホンモノじゃない気がするな…
恋は身体で感じるの。不思議だけど、見えるのよ、聞こえるの」
「……」
思わず、その吸い込まれそうな瞳に見入ってしまいました。
「それに、これは残酷なことだけど、縁ってのもまた、ある気がする… 確実に。どんなに好きでも、結ばれないことはあるし、なぜか不思議と縁あって一緒になることもあるように思われて…」
「……」
「あのね。私、前のカレシが、それはそれは大好き!だった。それこそ、好きすぎて食事も喉を通らないほど。帰ったら、その会話を、繰り返し繰り返し反芻して、ニヤニヤしたり、落ち込んだり… 頭の中は、彼でいっぱい。それほど、夢中だった」
「……」
「でもね。残念ながら、恋の神様は、そこにはいなかった。
私には、見えなかったのよ。恋の道しるべが… 変に意地をはって、たぶん、ちょっとしたサインを見逃してしまったのね。気がつくと、何かが、ほどけてしまっていた…」
「……」
「不思議なことに、今のカレはね。“見える”のよ。もちろん、今後は、どうなるかワカラナイよ。だけど、“ああ、今、この瞬間。どんなに恥にまみれても、プライドがずたずたになっても、追いかけなくてはイケナイ!”とか“連絡しなくっちゃ…”って時が、わかるよ。なぜか。頭でなく、身体で」
「だからね、あなたも、いつか必ず“見えるとき”がくるわ。そういう、道しるべ、みたいなものが。それこそ、
ピカッと輝くの。目に飛び込んでくるから。
そして、その時こそ、全力疾走しなくてはいけない。誰を傷つけ、何を失っても、絶対に手を伸ばさなくては… 離しちゃダメ、と感じる瞬間がくるわ。その時は必ずや、身体の声に素直になりなさいね。それで充分だと思う」
「…は、はい…」
その後、雑誌でテレビであまたの恋愛相談を聞いたけれど、いちばん印象に残ってるのはコレです。いまだに、な~んか忘れられない言葉なのでした。