黑田菜月写真展:わたしの腕を掴む人 |
本展は、昨年秋に中国の老人ホームで数日間通って撮影した作品です。
以前、電車の中でおばあさんに声をかけられたことがきっかけとなり、わたしは高齢者の方のまなざしに触れました。彼女は私と短いおしゃべりを交わすと、次の瞬間には私のことを忘れ、もう一度窓の外に見える美しい富士山の話をするのでした。
彼女は誰を見ているのだろう。その疑問は私を揺るぎなく見つめる姿を前にすると薄れ、私は彼女の見ているものこそが事実だと感じました。
高齢者の方の身体には、「異なる時間」が流れているように思うことがあります。ときに、それが過去と現在が交錯するような流れだとしても、カメラのファインダー越しに見つめ返されると、その一瞬はどこでもない場所で出会っているように思うのです。展示は撮影したカラープリントを中心に、高齢者を取り巻く方々からのインタビューや私が実際に体験したエピソードなどを組込み構成していきます。 (黑田 菜月)
ご老人の顔が、大陸的だなぁ、と思ってたら、そういう事情だったのですね。
その感性と着眼点が素敵だと感じました。
